SES企業のM&Aや事業譲渡について。M&A実例をご紹介。

経営

こんにちは!今回はゲスト寄稿です。

私は普段、M&Aや事業譲渡、人材紹介などを行っています。今回葉SES企業のM&Aについて記載させていただきます。

SESの会社は買うにも売るにもどちらの需要もあります。会社の売り買いに関わっていなくとも、その背景を知ることで見えてくる世界もあると思うので、その理由について解説します。

SES企業がM&Aの対象になりやすい理由

そもそもSES企業とはどんな会社?

SESの事業では、以下の要素が必要になります。

  1. エンジニアを雇用する
  2. エンジニアを他社に送り込む

会社のタイプによっては、1が存在せず、2だけ行っている会社も存在します。

それぞれを行うにあたって、以下の要素が必要になってきます。

  1. エンジニアを雇用する→エンジニア自身が必要
  2. エンジニアを他社に送り込む→営業が必要

ということで、エンジニアと営業がいれば成立するのがSES企業です。

なので買収する場合は、エンジニアと営業の組織を購入すると言う理解で概ね合っています。

SES企業を買いたくなるときはどんなとき?

SES企業を買収すると言うことは、先述のエンジニアと営業の組織で作られた事業を購入するということになります。

ではこの組織はどんなときに購入が必要になるのでしょうか

SES企業を購入する目的
  1. 既存事業の拡大:エンジニア不足の解消
  2. 既存事業のリスク回避:自社エンジニアの稼働確保
  3. 安定的な収益の確保:SES事業の経営計画のたてやすさ

それぞれ見ていきましょう。

既存事業の拡大:エンジニア不足の解消

企業はエンジニアの採用目的でM&Aを行うことがあります。

みなさんも”エンジニアが不足している”と言う話を聞いたことがあるとおもいますが、正確にいうと、「会社で必要としているスキルを持ったエンジニアが不足している」と言う事象が起きています。

M&Aをするときには、購入される会社のエンジニアの経歴やスキルを確認した上で購入することになります。なので、必要なスキルを持ったエンジニアをまとめて雇用できるのです。

また、ITエンジニアの採用費用は、79.7万円/人と他の職種と比較しても高めにあることがわかります。

https://www.mynavi.jp/wp-content/uploads/2019/03/%E4%B8%AD%E9%80%94%E6%8E%A1%E7%94%A8%E7%8A%B6%E6%B3%81%E8%AA%BF%E6%9F%BB.pdf

しかもこれは求人広告費の値です。これに加えて、採用担当者の対応賃金も上乗せされるので、79.7万円/人と言うのは少なくとも発生する費用と思ってください。

なので、採用目的で会社を購入する場合は、エンジニア1人あたり、79.7万円の価値があると考えてよいでしょう。(もちろん79.7万円/人の数字は平均値なので、担当業務やすきるによって変動します。)

副次的な要素ですが、”採用期間や手間をかけずに採用できる”、”チームとしての人間関係構築の手間がかからない”というのも購入側としてのメリットになります。

既存事業のリスク回避:自社エンジニアの稼働確保

購入元の企業が、自分たちでエンジニアを雇用している場合は、

安定的な収益の確保:SES事業の経営計画のたてやすさ

SES事業は経理計画が立てやすい事業です。

以下の式がベースとなって数字を組み立てていくので、将来計画が立てやすい事業といえます。

(売上)=(営業1人あたり売上)*(営業人数)

上場しているギークス社の数字を見るにしても、KPI構造など比較的容易に想像できます。

SES企業がM&Aされやすくなっている背景

SESの市場が拡大している

エンジニアが中心となるソフトウェア開発の市場規模は約17兆円と言われており、その規模は年々拡大しています。

このなかで、非正規社員の雇用比率も高まっています。

加えて、これまでは法的にグレーだと言われていた「エンジニアの業務委託での紹介」(=SES事業)が世間に認められつつあります。これはギークスがIPOしたことからもわかりますよね。

(SES市場の拡大)=(エンジニア需要の拡大)*(非正規雇用率のアップ)*(SESの社会認知)

と言ったところでしょうか。

SES企業のM&A相場は?

相場設定方法のトレンド

現在の相場設定のトレンドはEBITDAの3~5倍と言われています。

(過去、5~7倍と言われていた時期がありますが、その期間に大抵のめぼしいSES企業は売却され、需要も減ってしまいました。また、5~7倍の時代でも、その倍率がついた会社や、実際に買われていった会社は、エンジニアが多く在籍していた企業です。)

EBITDAについては算定式もいくつかありますが、簡単に表現すると「営業利益+減価償却費」になります。

(計算方式を理解できないと言うかたは、ひとまず営業利益だけで考えてみましょう。)

実際の会社ではどのくらい?

SESの営業組織において、営業利益を創出するのは比較的簡単です。

営業5名の会社、エンジニア0人の会社でものすごくざっくり考えてみると、EBITDA(ここでは便宜上、営業利益をEBITDAとして扱います)は8,100万円になります。なので売却金額は24,300~40,500万円になります。

2.4億円~4億円!結構高く売れるものなんですね!

5人営業のSES事業における営業利益(簡素版)

【収入】

(売上)=(営業1人あたり売上)*(営業人数)

    =(営業1人あたり契約数)*(契約1件あたり売上)*(営業人数)

    =30件 * 7万円 * 5人

    =1,050万円

【支出】

(支出)=(人件費)+(販管費)

    =(給与)+(法定福利費:社会保険など)+(販管費家賃など)

    ={(営業1人あたり給与)+(営業1人あたり法定福利費)+(営業1人あたり販管費など)}*(営業人数)

    ={(37.5万円 + 7.5万円 + 30万円)}*5人

    =375万円

【営業利益】

(営業利益)=(支出)-(収入)

      =1,050万円 - 375万円

      =675万円

上記の数字は月間の数字なので、単純に12ヶ月分にすると、営業利益は8,100万円(675万円*12ヶ月)になります

※算出に使用している数字はあくまで参考値です。

算出値の参考にしているのは以下です。

今回試算したSES企業は、営業5人、その営業メンバーが1人あたり契約30件を確保すると言う前提で計算しています。

これくらいの組織であれば、営業チームを持った人であれば作ることができるのではないでしょうか?(私の周りに何人か上記の組織体を作った方がいます。その方々は約3年で作っているので、3年で数億円が手に入ると思えば頑張れるのかもしれません。)

SES会社のM&A事例

続いてはこれまであったSES企業のM&A事例をみていきます。

譲渡金額の開示があったものだけ記載します。

(売却企業)→(購入企業)での表記をしています。

ビクタス→ナレッジスイート

■譲渡金額:3.17億円

■譲渡目的:エンジニアの確保

RINET→ITbook

■譲渡金額:1.08億円

■譲渡目的:事業シナジー獲得

アルゴリズム→日本プロセス

■譲渡金額:1.59億円

■譲渡目的:事業シナジー獲得

ヒューマンウェア→スリープログループ

■譲渡金額:4.65億円

■譲渡目的:エンジニアの確保

パナR&D→アルプス技研

■譲渡金額:12.0億円

■譲渡目的:事業シナジー獲得

アンドールシステムサポート→ソーバル

■譲渡金額:1.02億円

■譲渡目的:エンジニアの確保(受託事業の拡大)

KDEホールディングス→アウトソーシング

■譲渡金額:14.2億円

■譲渡目的:エンジニアの確保

こう見ていくと、SES関連で10億円を超えてくるM&Aはなかなかないみたいですね。

まとめ

SES事業のM&Aについて
  • SES事業のM&Aは、採用目的かリスク回避目的が大半
  • M&Aには金額算出の方法がある。(なので計算するとざっくり自社価値がわかる)
  • 実例としては数億円程度のM&&Aが実施されている

コメント

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