SES事業における契約の注意点

ノウハウ

※この記事はSESを行っている事業会社向けの記事です。

SES事業には契約書を作成する機会が何度もあります。

クライアント、カスタマー双方と契約書を結ぶからです。

当然、その契約の数だけトラブルの可能性もあります。

トラブルに巻き込まれないためにも、SESにおけるトラブルについて勉強していきましょう。

SESにおける契約について

SESでは契約のトラブルがよくある。業界の背景。

先述しましたがSESには契約のトラブルがよくあります。

SESは関わる人が多いので契約する相手の人数も増えます。

また、(業界として良くない商習慣だとは思いますが)商流が深い契約を行うこともあります。

そうした会社の中には、契約やSESという業態についてもあまり教育を受けていない人であったり、あわよくば相手のスキをついてお金をせしめようとする人がいるのも事実です。

こうした背景からトラブルが増え、トラブルによってSESという事業自体を嫌いになってしまう人が多くいるのも事実。

業界健全化、メンバーやエンジニアに不快不安な思いをさせないためにも、契約に強くなりましょう!

SES契約におけるトラブル実例。よくあるトラブル3つ

SESにおけるトラブルは、いくつかのパターンに集約されます。

よくあるパターンを見ていきましょう。

実例①クライアントと契約をしたが、カスタマーが契約をしてくれなかった

SES営業
SES営業

無事クライアントと契約を締結することができました!

早速ですがエンジニアさんとの契約書を作成しましょう!

エンジニア
エンジニア

あれ、もう契約はできませんよ?

僕はもう別の会社と契約してしました。

「”昨日”返事を貰えれば契約する」と言いましたが、

今日の連絡ではもう遅いです。

SES営業の契約は良くも悪くも、クライアントとカスタマーの間に挟まる契約です。

なので、クライアントがOKを出しても、カスタマーがNGであれば契約はできません。

とにかく鉄則として、クライアントとカスタマー間の情報を双方に正確に伝えることを徹底しましょう。

また、双方からいただいた条件のエビデンスを残すことも重要です。

実例②クライアントから急な契約解除をされてしまったが、カスタマーの契約は解除できなかった

SES営業
SES営業

エンジニアさん、今週で契約は終了です。

期間途中ですが契約を中途解除させてくれという連絡がクライアントからありました。

エンジニア
エンジニア

中途解除はできないと思います。

仮に解除するとしても、一ヶ月前告知を必要とするので、今週で終了というのは契約違反に当たりますよ。

SESの契約は、SES会社とクライアント、SES会社とカスタマー(上記の場合はエンジニア)との契約です。

上記の例は、以下のような状況のときに発生します。

  • SES会社-クライアント間の契約では、中途解除の事前告知は必要ない
  • SES会社-カスタマー間の契約では、中途解除の事前告知は一ヶ月前に必要

SES会社はよくも悪くも間に入るビジネスなので、基本的にはクライアント、カスタマーどちらに対しても同じ条件で契約書を作成します。

もしくは、自社が優位(一般的にはクライアントからもらった条件よりも悪い条件をカスタマーに提示します)になるような契約を常にしていきましょう。

実例③高額な損害賠償請求をされてしまった

SES営業
SES営業

エンジニアさん!現場で大変なバグをだしたそうじゃないですか。

明らかに意図的なバグだと言ってクライアントは激怒していますよ!

損害賠償で1000万円を請求されているので、弊社からエンジニアさんにも同額を請求させてもらいますからね!

エンジニア
エンジニア

そんなこと言われても困ります。

契約上は損害倍書の上限は、単月の金額と書いてあります。

単月の金額は1000万円にはとても及ばないので満額は何があっても支払いませんからね!

SESの営業をやっていると、意外にも損害賠償の話が出てきます。

損害賠償の話が出るときは、大抵の場合は怒っているということを相手に理解させるためのポーズです。

まず、損害賠償はポーズであるということを理解して、慌てずに落ち着いて対応しましょう。

相手が怒っている場合はどこに怒っているのかを論理で考えて、論理で謝罪し、最後は情に訴えることが重要です。

また、この場合は、クライアントとの契約では損害賠償の上限をつけていなかったものの、カスタマーとの契約には上限をつけていなかったことによるトラブルです。

この場合も実例②と同じくクライアント、カスタマーどちらに対しても同じ条件で契約書を作成するということを徹底することで問題を避けることができたはずですよね。

トラブル対策。契約締結の前に契約書の内容を確認しよう

チェックリストに従って契約内容を確認しよう

先程、トラブルの実例をみてきましたが、基本的には契約周りのトラブルはいくつかのポイントを抑えるだけで大半を避けることができます。

いくつかのポイントを表にまとめたので、契約の際にはすべての項目をクリアしているかを確認してください。

チェック項目チェック内容
損害賠償単月金額かつ受け取り(支払い)金額が上限となっているか
納品物勤務表が納品物となっているか
入金支払サイト入金サイトが支払いサイトよりも短くなっているか
引き抜きの禁止引き抜きまたは商流飛ばし禁止しているか。
また、引き抜きや商流飛ばしをした場合は、違約金をもらうことができる契約になっているかどうか。(「紹介料」という記載はNG。紹介には認可が必要です。)
契約内容の比較クライアントと締結している条件が、カスタマーと行っている契約と比較して同等またはゆるい内容になっているか(最終的にはカスタマーに責任をとってもらえる形になっているか)

チェックリストに反する契約内容があったときは?

チェックリストを元に契約書を確認していると、チェック項目に違反する内容の契約書をもらうことがあります。

そうなった場合はまずクライアントやカスタマーに相談しましょう。

SESの営業としては、最低でも、クライアントとカスタマー双方に同じ内容の契約を締結させれば問題は有りません。

なのでクライアント及びカスタマーに「社内調整をする」という体で相談しましょう。

(とは言え自社で吸収する必要が出てくる場面もあります。その場合は各状況に合わせて経営層に相談してください。)

トラブル回避。契約書だけではない契約の落とし穴を避けよう

契約書で書面になっている項目以外にも落とし穴が存在します。

口頭の約束でも契約になる

口頭の約束でも契約になってしまいます。

これは、商談の場で、相手がボイスレコーダー等を使用している場合はその内容が契約内容として有効になってしまうという意味です。

ボイスレコーダーを日々使用している人はいないとはおもいますが、契約内容についての商談の場合は、必ず議事録を送ってください。

議事録には、「上記文面以外の条件は契約に盛り込まないものとしますがよろしいでしょうか?」の一文をつければ口頭で安請け合いしてしまった条件を本気にされなくて済みます。

エビデンスを回収しよう

契約に関わる内容を話した際には必ずエビデンスを残す様にしてください。

エビデンスとは、簡単に言うと「証拠」です。その条件に合意したという内容を文字で残します。

基本的には、エビデンスを残すにはメールで会話した内容を文字にするという理解でOKです。

LINEなどのチャットツールはエビデンスになる?

結論から言うとLINE等はエビデンスになりません。

SESの営業の方はLINEやメッセンジャーなどのチャットツールを使用して連絡を取ることも多いでしょう。

その場合であっても必ずメールでエビデンスを残してください。

  • メール:あとから編集や削除ができない
  • チャットツール:後から編集や削除ができる

上記の性質から、どうしてもチャットツールではエビデンスにはなりません。

一度送った内容を書き換えられてはこまりますよね?

まとめ

今回のまとめです。

  • SESはトラブルがつきもの
  • トラブルを避けるために契約書はチェックリストに基づいてしっかりと確認しよう
  • 契約書以外にも契約にまつわる落とし穴はいっぱいある

SES事業は人材事業です。

人の人生を左右する可能性もあるような影響力の大きい仕事です。

他人の人生を守るためにもトラブル対策を確実におこないましょう。

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